生け花の流派について・ヒメウツギの原産地、育て方、寄せ植え、花言葉
室町時代から続く日本の伝統文化「生け花」ですが、さまざまな流派があることはまだ知らない方が多いと思います。今回はそんな生け花の流派についてご紹介させていただきます。
目次
そもそも「流派」とは
家元・宗家(日本の伝統文化における本家としてその文化を正しく伝えていく地位につく者のことを指す。)によって形成され、その道において流儀が違うために生まれたものを流派といいます。
生け花だけではなく、さまざまな日本の伝統文化において流派は存在します。
さまざまな流派
室町時代に「池坊」が確立され、生け花における流派の数は現在では300を超えると言われています。
その中でも有名な流派は「池坊」、「草月流」、「小原流」であり、「三代流派」と呼ばれています。今回は生け花における三代流派についてご紹介させていただきます。
1.「池坊」
室町時代に、当時京都の僧侶であった「池坊専慶(いけのぼう せんけい)」によって確立されたといわれ、生け花の中でもっとも歴史深い流派となります。その歴史は550年以上にもおよびます。
他の流派は「○○流」と名前がつくことが多いのですが、池坊は「華道家池坊」と称されています。現在は第四十五代家元「池坊専永」によって継がれています。
池坊では、草や花などの植物が持つ生命と自然の中に美と和を見いだします。池坊では美しい花の状態だけではなく、植物のあらゆる状態においてもそのありのままの姿を生かすことを大切だとしています。
池坊では「立花」「自由花」「生花」が主な技法です。
2.「草月流」
草月流は1927年に勅使河原蒼風(てしがわら そうふう)によって確立されました。草月という名前の由来は勅使河原家の家紋である「根笹に三日月」からきています。現在は第四代家元「勅使河原 茜」によって受け継がれています。
草月流における最大の特徴は自由に生けることです。実際に草月流の作品を見てみると、生けた人それぞれによって強く個性が出ていることが多いです。
また、草月流では「生け花」とは使わず、ひらがなで「いけばな」と使われます。「いける」を「造形る」「変化る」などと表現することからも草月流におけるいけばなが自由で個性豊かであるさまがうかがえます。
3.「小原流」
1895年に小原雲心(おはら うんしん)によって創始されました。小原雲心は元々は池坊の門弟だったのですが、のちに独立し自らの流派をつくりました。現在は第五代家元である小原宏貴(おはら ひろき)によって受け継がれています。
以前は線的な表現が多かった生け花ですが、「盛り花(もりばな)」というスタイルを確立したことで、それからは面を活かした多様な表現が増えるようになります。盛り花とは広めの水盤を使い剣山の上に花を盛るようにいける技法にのことです。小原雲心が盛り花というスタイルや洋花を生け花に導入したことで、最初こそは多くの批判が集まりましたが、次第に大衆を中心に受け入れられるようになり、現代では一般的に使われるようになっています。
まとめ
今回は生け花の流派の中でもメジャーな流派をご紹介させていただきましたが、もし良かったら生け花を始めたいという際に参考にされてみてくださいね。
ヒメウツギのプロフィール
一般名:ヒメウツギ
学名:Deutzia gracilis
科名:アジサイ科
属名:ウツギ属
原産地:日本
樹高:約1.5m
花形:枝先に円錐花序
開花時期:5~6月
ヒメウツギの花言葉
ヒメウツギの花言葉は、「秘密」、「秘めた恋」、「夏の訪れ」、「古風」、「潔白」です。
ヒメウツギは日本古来種で、昔から愛されている植物なので、「古風」というのは納得です。初夏に花が咲き、「夏の訪れ」を告げるように感じられます。花びらは真っ白なので、「潔白」というのもよくわかります。「秘密」、「秘めた恋」という言葉は、初夏に咲き始めた花が、梅雨の長雨の間もじっと耐え、花を咲かせ続ける姿が、「秘密」や「秘めた恋」を守る姿になぞらえられたのでしょうか。折口信夫氏の「花と民俗」の中で、「ヒメウツギは稲の豊凶を占う花で、長く咲く年は豊作、早く散るときは凶作と信じられていた」と著しています。稲の豊凶という、生活に関わる「秘密」をヒメウツギは教えてくれる花だったとも言えます。
ヒメウツギの特徴
ヒメウツギは、灰褐色の木肌の落葉低木です。対生してつく葉は、長めの楕円形で、冬になると、葉は落ちます。花は、初夏の5~6月に咲きます。枝先に円錐花序をだし、白色の花を多数つけます。花弁は、5枚で10本のおしべがあります。花が咲くと枝が枝垂れて、もっこりとした樹形になり、白く散る花とともに、愛らしい姿を見せます。耐寒性もあり、日向の方が生育はいいですが、日陰でも多少日が差すところであれば、充分育つ強さを持っています。日本固有種で、関東以西、四国、九州に分布しています。
ヒメウツギという名前とエピソード
ヒメウツギの名前は、ウツギよりも背が低く小さいためにつけられました。漢字で書くと、「姫空木」、「姫卯木」といった文字が当てられます。花の様子から、「卯の花」、「雪見草」といった別名もあります。
日本古来の原種のため、初夏を飾る花として古くから親しまれ、万葉集にも詠まれています。「ホトトギス 鳴く声聞くや 卯の花の 咲き散る丘に 葛引く娘子」という歌には、初夏にヒメウツギ(卯の花)が咲く丘で乙女が葛を引いている姿が描き出され、初夏の爽やかな季節感を感じます。「春されば 卯の花ぐたし 我が越えし 妹が垣間は 荒れにけるかも」という歌からは、当時からヒメウツギが生垣として植栽されていたことが分かります。万葉集の時代には、卯の花という名で知られていたヒメウツギ、今でも庭木として愛されている木が、1000年以上前にも同じように植栽され、景色を彩っていたと思うと不思議な感じがします。
四季それぞれの訪れを告げるヒメウツギ
日本原種のヒメウツギ、元々日本の風土に合っている植物だから、それほど手もかからず、風景にも溶け込み、人々にも愛されるのでしょうか。真っ白で清楚な花、鮮やかなグリーンの葉、見上げるように高くはならず、ほどよい高さの木、丈夫で病害虫にも強いだけでなく、乾燥にも強い、と理想的な庭木だと思います。枝が枝垂れるほど、花がびっしりとつく花姿には、風情を感じます。冬には葉を落として、春先には葉が芽吹いて季節の変わり目を教えてくれるのも、良いなあと思います。花言葉にあるように、昔から日本にあって「古風」な木ですが、「夏の訪れ」だけでなく、四季それぞれの訪れを感じさせてくれるヒメウツギ、お庭に一本あると嬉しい木だと思います。